産道を通る赤ちゃんが病気になりにくい理由【腸内細菌が健康のカギ】

産道を通る赤ちゃんが病気になりにくい理由出産
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  • 赤ちゃんが産道を通るメリットは?
  • 産道を通るときにどんなことが起きているの?
  • 自然分娩と帝王切開ではその後の健康状態に違いはあるの?
  • 産道を通る赤ちゃんは免疫力が高いって本当?

こんな疑問にお答えします。

妊娠中の方であれば、できれば自然分娩で産みたいと願う方が大半だと思いますが、最近では痛みの恐怖を理由に帝王切開を希望する方も珍しくありません。

そこで気になるのが、「産み方によって子どもの健康状態は変わるのか」という点です。

よく、帝王切開で産まれた子どもはアレルギーや喘息にかかりやすいと言われていますが、

  • 実際に自然分娩と比べてどのくらいリスクがあるのか
  • なぜ自然分娩で産まれた子どもは病気になりにくいのか

について答えられる人はほどんといません。

赤ちゃんが辛い思いをして産道を降りてくるのにはちゃんと意味がありますし、そのプロセスこそが健康の始まりなのです。

本記事では、

  • 帝王切開と病気の関係
  • なぜ自然分娩だと病気になりにくいのか
  • 産道を通る意味

について、一般の方にもわかりやすく解説します。

これから出産を控えている方は、是非読んでみてください。

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帝王切開による母親への影響についてはこちらの記事をご覧ください。

産道を通る赤ちゃんが病気になりにくい理由

産道を通る赤ちゃんが病気になりにくい理由

分娩様式と病気発症リスクの関係

  • 母親がアレルギーでなおかつ帝王切開で産まれた子どもは、そうでない子よりも7倍アレルギーになりやすい
  • 帝王切開で産まれた子どもは自閉症の発症率が高くなる
  • MRSAに感染した新生児の8割は帝王切開で産まれている
  • 1型糖尿病は帝王切開で産まれた子どもの方がなりやすい 
  • 帝王切開で産まれた子どもはそうでない子よりも肥満になりやすい

上記はこれまでの研究で明らかになった、分娩様式と病気の発症リスクの関係です(参考:『あなたの体は9割が細菌』)。

自然分娩と帝王切開を比べた時、赤ちゃんにとっての一番の違いは「産道を通るか通らないか」です。

母親からすると、「分娩時の痛みがあるかないか」「産後の回復が早いか遅いか」という観点での比較になるため、胎児が産道を通る意味について考える機会はあまりないかもしれません。

しかし数々の研究で、産道を通ってきた赤ちゃんは帝王切開で産まれた子よりも病気になりにくいことが明らかになっているのです。

では、なぜ自然分娩で産まれた子どもは病気になりくいのでしょうか。

そのカギを握るのが、「腸内細菌」です。

胎児は産道を通る時に母親の細菌を受け取る

赤ちゃんは産道を通るとき、

  • 母親の膣内にいる細菌
  • 母親の便に含まれる細菌

を全身に受け取ります。

細菌というと、身体に悪い影響を与えそうなイメージを抱くしれませんが、決してそんなことはありません。

私たちの身体には1,000種類以上の細菌が生着し、食べ物の消化や吸収、免疫反応などの機能をサポートしてくれています。

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地球上のあらゆる生き物は、細菌なくして生きていくことはできないのです。

子宮内はほぼ無菌状態で守られているため、胎児にとってはこれが初めての細菌との対面になるわけですね。

まず膣にいる細菌を浴び、それから陣痛や出産時に排泄された便の細菌を受け取ります。

ずっと無菌の環境で育っていた赤ちゃんですが、誕生の瞬間に母親からの細菌を定着させると、すぐに皮膚、気道、消化管などの粘膜で細菌が増殖し始め、腸内細菌のベースが作られます。

赤ちゃんはこのようにして産道を通る中で母親由来の細菌を受け継ぎ、外界で生きていくための準備をしているのです。

出産時は胎児の圧迫と子宮収縮ホルモンの作用によって、多くの女性が排便します。赤ちゃんは母親の肛門側を向いて出てきますが、これは便の細菌を効率的に受け取るための一つの戦略なのでしょう。

腸内細菌の働き

では、赤ちゃんが産道で獲得した細菌には具体的にどのような働きがあるのでしょうか。

子どもの健康を考える上で特に大事なのが、以下の2つの善玉菌です。

  • ビフィズス菌
  • 乳酸菌(乳酸桿菌)

まず、新生児の腸内細菌の99%を占めるビフィズス菌。

生後4日目頃から急速に増殖し、殺菌作用のある酢酸を産生します。

酢酸の作用によって腸内で炎症を起こす原因となる悪玉菌を駆逐し、腸の細胞を健康に保つことができるのです。

下図のようにビフィズス菌は出生直後から増殖し、離乳食が始まるまでは腸内細菌の大半を占めています。

腸内細菌の組成
引用:「腸の楽」HPより

2つ目の乳酸菌は、細胞の形態によって桿菌と球菌に分けられます。

女性の膣には乳酸菌が豊富に存在し、膣内を酸性に傾けることで感染症を防ぐ役割を持つため、以前はこれこそが乳酸菌の役割だと考えられていました。

しかし、乳酸菌の本来の役割は別のところにあったのです。

赤ちゃんは誕生の瞬間に母親の膣から乳酸菌を受け取り、腸内で乳酸菌を定着させます。

乳酸菌は乳酸を作り出し、腸を酸性に維持することで腐敗を防ぎ、腸の蠕動運動を促進するという役割を持ちます。

つまり、乳酸菌は女性の膣を守るだけでなく、赤ちゃんの腸内細菌のベースをつくるために膣に存在しているのです

その証拠に、乳酸菌は妊娠可能な年齢にならないと膣には常在しません。

妊娠すると乳酸菌の割合は急激に増加し、妊娠後期の膣分泌液には乳酸菌の餌となるグリコーゲンが多く含まれるようになります。

さらに妊娠の進行に伴い、母親の膣には普段は腸にいる細菌が棲みつくようになります。

これは赤ちゃんが離乳食を開始したときに、食べ物を消化する腸内細菌が必要になるからです。

このように妊娠中は身体の中の細菌の分布が大きく変化し、産まれてくる我が子に送り届ける準備をしているんですね。

ちなみに、ヨーグルトの宣伝で「生きた菌が腸まで届く」というキャッチフレーズがありますが、実際にヨーグルトに含まれる菌がそのまま腸に定着するわけではありません。正しくは、ヨーグルトの摂取によって自身のビフィズス菌が増殖するのです(詳細はこちら)。

帝王切開で産まれた子どもの腸内細菌

帝王切開で産まれた子どもの腸内細菌

母親由来の細菌が圧倒的に少ない

一方、帝王切開で産まれた赤ちゃんは産道で母親の細菌を受け取ることができません。

無菌状態の環境から抜け出し最初に出会うのは

  • 空気中の細菌
  • 医師や看護師の皮膚の細菌
  • 母親の腹部の皮膚の細菌

です。

つまり、自然分娩で産まれた子どもが母親の膣内細菌及び腸内細菌を受け取るのに対し、帝王切開で産まれた子どもは皮膚の細菌がベースとなるということです。

自然分娩では赤ちゃんの腸内細菌と母親の膣内細菌の組成は一致しますが、帝王切開で産まれた子どもはそうはなりません。

【ポイント】子どもの腸内細菌の組成
  • 自然分娩で産まれた場合:膣内常在菌が優位
  • 帝王切開で産まれた場合:皮膚の細菌が優位

病気発症と腸内細菌の関係

このように、分娩様式によって赤ちゃんの腸内細菌は大きく異なりますが、近年になって様々な病気との関係性が指摘されています。

ビフィズス菌は感染防御機構だけでなく、多様な疾患に対する予防のために重要であると考えられている。たとえば、アトピーを発症した乳児は発症していない乳児に比べて、生後1年目までにおける腸内ビフィズス菌の検出率が有意に低いことが示されており、腸内へのビフィズス菌の早期定着がアレルギーの予防につながることが示唆されている。また、BMIが25を超える肥満型の子供は通常体型の子供と比べて、生後1年目におけるビフィズス菌の検出率が有意に低いことが報告されており、肥満防止につながる可能性も示された。

引用:『乳児腸内フローラの形成機構生涯の健康状態を左右する重要なイベント

要は、乳児期のビフィズス菌の定着と占有率が、その後の病気の発症に大きな影響を与えるということです。

また、2歳までに抗生物質を与えられた子どもは、7歳半の時点でぜん息の発症率が高くなるという報告もあります。

抗生物質の服用によって死滅するのは、病気の元となる細菌だけではありません。

腸内の大切な細菌までもが同時に殺されてしまうのです。

事実、抗生物質や帝王切開が普及する以前は、アレルギーや喘息、肥満、自閉症、糖尿病といったいわゆる「現代病」はほとんど存在しませんでした。

近年の様々な研究において、幼少期の腸内細菌の組成が健康にとっていかに大切であるかが徐々に示されつつあります。

急増する帝王切開の実施率

いま、世界では帝王切開の実施率が急激に上昇しています。

1940年頃から増え始め、1970代に入ると急カーブで上昇し、現在も着実に増加し続けています。

以下は、世界の帝王切開の割合ランキング上位10か国です。

世界の帝王切開の割合
情報源:2011年 世界保健機構(WHO)

世界的にみると南米諸国で割合が高く、中でもブラジルの都心部では帝王切開実施率95%という病院もあります。

ちなみに日本は31位で19.2%です。

もちろん帝王切開の普及によって、母子ともに救われる命が増えたことは確かです。

逆子や心拍低下、臍帯異常、母親の高血圧がある場合は、自然分娩での出産はリスクが高すぎるでしょう。

しかし最近では、

  • 出産時間を医療スタッフの多い平日の昼間にコントロールできる
  • 訴訟を起こされないようわずかなリスクをも避けるため

という病院側の都合で帝王切開を行うケースが増えています。

そこには、母親や赤ちゃんの健康に対する配慮はありません。

世界保健機構(WHO)は、母子の命を守り、なおかつ不必要な手術を避けたとしたら、帝王切開の割合は全体の15%以下におさまるはずであるとしています。

既に述べた通り、赤ちゃんは「どのように産まれてきたか」によってその後の健康状態が大きく左右されます。

子どもの健康を無視した不要な帝王切開が、少しでもなくなることを祈るばかりです。

【まとめ】赤ちゃんが産道を通る意味

赤ちゃんが産道を通る意味

産道を通る赤ちゃんが病気になりにくい理由は、

  • 産道で母親由来の細菌を受け取る
  • それによって健康維持に働く腸内細菌を定着させることができる

これが大きな要因です。

最近では、帝王切開で産まれた子どもに対して母親の膣内細菌を塗り付けると、何もしない子どもよりも母親に近い腸内細菌叢になる、といった報告もあります。

とはいえ、腸内細菌と病気の発症については現時点ですべてが解明されているわけではありません。

私たちにできることは、赤ちゃんが産道を通る意味や帝王切開が及ぼすリスクについて理解を深めること。

そして、「自然がなすことにはすべて意味がある」と知ることではないでしょうか。

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