母乳育児は「神話」ではない。粉ミルクとの決定的な違いとは【医学的根拠あり】

母乳育児は神話ではない産後
スポンサーリンク
  • 母乳育児のメリットって?
  • 母乳神話に惑わされたくない
  • 粉ミルクじゃダメなの?
  • 授乳形態は赤ちゃんの健康に直接的な影響はあるの?

本記事はこのような疑問を持つ方のために書きました。

1970年代にWHO(世界保健機構)が母乳育児を推奨したのを機に、「完全母乳で育った子どもは健康」「母乳は赤ちゃんにとって最高の食事」という考え方が世界で浸透。

ところが次第に、

  • 2歳までは絶対に母乳で育てるべき!  
  • 粉ミルクで育てるなんて母親失格

といった行き過ぎた考え方をする人も増え、揶揄の意味を含んだ「母乳神話」という言葉が誕生しました。

たしかに、実際に母乳だけで育てるのは大変です。

おっぱいが出なくて悩んでいるお母さんもたくさんいますよね。

でも、母乳には粉ミルクでは補うことのできない成分が含まれていることは事実であり、授乳形態によって病気にかかるリスクが明らかに異なるという研究結果も報告されています。

本記事では、

  • 授乳形態による病気のリスクの違い
  • 粉ミルクで育った子が病気にかかりやすい理由
  • 母乳神話という言葉が生れた背景

について考えてみたいと思います。

子どもの健康について考えるきっかけになれば幸いです。

母乳育児は「神話」ではない

母乳育児は「神話」ではない

結論からいうと、「母乳の赤ちゃんは健康に育つ」という主張には医学的な根拠があります。

様々な研究において、母乳育児が子どもの病気のリスクを軽減する事実が明らかになっているのです。

では、粉ミルクで育った子と比べて具体的にどのように違うのでしょうか。

粉ミルクで育つ子は感染症にかかりやすい

「母乳は栄養が豊富に含まれている」という認識を持つ人は多いものの、実際に子どもの健康にどのくらい寄与しているのかについて知っている人はほとんどいません。

しかし母乳と粉ミルクを比較した研究結果を見てみると、その差は歴然です。

粉ミルクで育った赤ん坊は、母乳だけの赤ん坊に比べ、

 ・耳感染症になるリスク…2倍

 ・呼吸器感染症で入院するリスク…4倍

 ・胃腸感染症になるリスク…3倍

 ・壊死性腸炎になるリスク…2.5倍

とそれぞれ高くなる。

引用:『あなたの体は9割が細菌』/アランナ・コリン(著)

要は、粉ミルクで育つ子どもは感染症にかかりやすいのです。

さらに、乳幼児突然死症候群で死亡するリスクも2倍高く、アメリカの乳児死亡率(1歳未満で死亡する割合)は、粉ミルクで育った子どもの方が1.3倍も高いと報告されています。

母乳は現代病のリスクを軽減する

その他に、粉ミルクで育つ子どもがかかりやすい病気としては、以下が挙げられます。

  • 喘息
  • 1型糖尿病
  • 皮膚炎
  • 小児白血病
  • 肥満

喘息と皮膚炎、肥満に関しては、母乳の子どもよりもリスクが2倍も高いというデータが出ています。

中でも、最も心配されているのが肥満。

生後9か月までは、以下のように母乳育児の期間が長いほど子どもが肥満になるリスクは下がると報告されています。

生後2か月まで母乳だけで育てる⇒8%のリスク減

生後3か月まで母乳だけで育てる⇒12%のリスク減

生後9か月まで母乳だけで育てる⇒30%のリスク減

ちなみに、この影響は小児期だけに留まりません。

大人になってからの体重にも影響し、結果として2型糖尿病などのリスクも高くなるのです。

実際に、粉ミルクだけで育った子どもは将来60%も多く糖尿病になるというデータがあります。

WHOは、生後6か月までは水やそれ以外のものを与えず母乳のみで育てる完全母乳育児を行い、その後は適切な食事を補いながら2歳かそれ以上まで母乳を続けることを推奨しています(詳細はこちら)。

粉ミルクとの決定的な違い

粉ミルクとの決定的な違い

母乳に含まれる成分

では、なぜ母乳と粉ミルクではこれほど病気のリスクに差が出るのでしょうか。

答えは、母乳に含まれる成分にあります。

母乳に含まれる成分と機能
  • 生きた細胞…免疫に働く白血球、臓器の発達を促す幹細胞を含む
  • オリゴ糖…良質な腸内細菌を植え付ける
  • 酵素…消化や免疫をサポートする
  • たんぱく質…免疫の活性化
  • 抗体…ウイルスや細菌と戦い、感染症を防ぐ
  • ビタミン、ミネラル…骨や歯の形成を助ける
  • ホルモン…各器官の間で情報伝達を行い、食欲や睡眠を調整する
  • 長鎖脂肪酸…脳、神経、目の発達を助ける

上記のように母乳には様々な成分が含まれていますが、粉ミルクとの決定的な違いは「生きた液体」であることです。

現代の粉ミルクにも豊富な栄養成分が含まれていますが、生の細胞、免疫細胞、抗体までは入っていません。

母乳を飲む赤ちゃんは、この生きた液体から一日に80万個の細菌(細胞に含まれる)を摂取し、免疫系や消化機能が最適に働く環境を作り出しています。

よく、粉ミルクのパッケージに「母乳成分に近い!」と書かれていたりしますが、生の細胞(細菌)を含まない限り母乳の代わりにはなりえないのです。

腸内細菌の組成の違い

母乳育児の最大のメリットは、良質な腸内細菌の基礎をつくることにあります。

母乳のみで育てた乳児と、人工乳または混合乳で育てた乳児の両者では、腸内フローラを構成する細菌に違いがある。完全母乳栄養児には、乳酸菌やビフィズス菌が多いことが数多く報告されている。

※腸内フローラ:腸内には1,000兆個以上の多種多様な細菌が存在しており、まるで花畑(flora)のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれています

引用:『乳児腸内フローラの形成機構生涯の健康状態を左右する重要なイベント

簡単にいうと、完全母乳で育つ子どもの腸内には、乳酸菌やビフィズス菌が豊富に存在するということです。

乳酸菌やビフィズス菌は善玉菌と呼ばれ、腸の炎症反応を起こす悪玉菌を駆逐したり、腸の蠕動運動を促す作用を持ちます。

特にまだ消化器系、免疫系のシステムが未熟な赤ちゃんにとっては、非常に重要な細菌です。

加齢に伴いこれらの細菌の数は減少していきますが、幼少期に獲得された腸内細菌のバランスは、基本的に生涯変わることはありません。

つまり、赤ちゃんの頃にいかに適切な腸内細菌を獲得するかによって、幼児期以降の健康状態が左右されるのであり、その一番最初のステップが母乳育児というわけです

母乳に含まれる細菌やオリゴ糖は、赤ちゃんが正常に発達していけるように最適な腸内環境を提供します。

一方、粉ミルクで育った赤ちゃんの腸内には、病原菌や不要な細菌が混じっていることが多く、中でもクロストリジウム・ディフィシルという下痢を引き起こす細菌は、粉ミルクの赤ちゃんの8割が保有していると報告されています(母乳の子どもは2割)。

なぜ「母乳神話」と言われてしまうのか

なぜ「母乳神話」と言われてしまうのか

本記事の要約です。

  • 粉ミルクで育つ赤ちゃんは、母乳の赤ちゃんと比較して病気にかかりやすい
  • 特に感染症、肥満、喘息、皮膚炎などにおいては明らかにリスクが高くなる
  • 母乳には生きた細菌、免疫細胞、抗体など、粉ミルクには含まれていない成分が豊富であり、これらが赤ちゃんに最適な腸内細菌を提供している
  • 幼少期に適切な腸内細菌を獲得しておくことで、将来の病気を未然に防ぐことができる

母乳が子どもの健康に大きなメリットを及ぼすことは、すでに数々の研究で立証されている事実です。

にも関わらず、なぜ「神話」などと言われてしまうのでしょうか。

理由① 実際に母乳育児をするのは大変

一つは、実際に完全母乳で育てるのは難しいということが挙げられます。

お母さんの身体の事情によっては、おっぱいが出なくて辛い思いをする人もいますし、赤ちゃんがなかなか飲んでくれないという場合もあるでしょう。

ただ、その問題とこれまでみてきた母乳の話はまったく別物です。

たしかに、様々な事情により、WHOのいうように6か月まで完全母乳で育てられるお母さんはほとんどいません。

しかし、だからといって

  • 母乳と粉ミルクの栄養に大差はない
  • 授乳形態は子どもの健康には関係ない

ということにはならないのです。

ネットを見ると、上記のような内容の記事をたくさん見かけますが、そういった都合の良い情報を集めて正当化しようとするのは、ちょっと違うような気がします。

理由② 母乳育児の効果はすぐに体感できるものではない

もう一つの理由として、母乳育児のメリット、粉ミルクのデメリットはすぐに実感として感じられるものではありません。

母乳で育った子どもが本当に病気にかかりにくいのかどうか、それがわかるのは数十年先の話です。

また、粉ミルクで育ったからといって、すぐに症状が現れるわけではありませんし、致命的な病気を発症するわけではありません。

でも、脳卒中や心筋梗塞などに代表される現代の病気は、長年の生活習慣やストレスなどの蓄積を経て発症します。

つまり、小さな要因の積み重ねが、やがて大きな病気を引き起こすのです。

私は、「絶対に母乳じゃないとダメ!」などと言うつもりはありません。

場合によっては粉ミルクと併用しなくてはいけない状況も多々ありますし、それ自体を否定するつもりは全くありません。

しかし、「母乳と粉ミルクはたいして変わらない」という考えには断固反対です。

もっというと、そうした考えによって安易に粉ミルクに切り替えてしまう人がいることにも疑問を感じています。

母乳のメリットを正しく理解した上で、その時の状況に合わせてベストな選択をすることが望ましいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました