
人工授精、体外受精、顕微授精っていったい何が違うの?
不妊治療を考えている人であれば、誰もが最初に抱く疑問ではないでしょうか。
一言で不妊治療といっても、段階に応じて様々な方法があります。
最も妊娠しやすい排卵期を予想し、性交する日を指導するタイミング法や、人工的な操作を加えて妊娠を目指す生殖補助医療(ART)、それぞれ治療方法や対象は大きく異なります。
この記事では、
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
の3つの違いについてわかりやすく解説していきます。
【不妊治療】人工授精、体外受精、顕微授精の流れ
不妊治療は、基本的に簡便な方法から始めて、妊娠に至らなければより高度な治療法にステップアップしていきます。

不妊治療のうち、精子や卵子、受精卵に人工的な操作を加える方法を生殖補助医療といいます。
【不妊治療】人工授精
人工授精の概要
人工授精は、受精の場(卵管)に達する精子数を増加させるために、精子を子宮内腔に注入する方法です。

排卵日を予測し、排卵1~2日前から排卵直後の間に行います。
タイミング法で妊娠に至らない場合、次のステップとして人工授精を勧められることが多いですが、採取した精子を注射器で子宮に注入するだけなので、やっていることは普通の性交と変わりません。
一つ異なるのは、精子を人工的に子宮内まで送り込むため、第一関門である子宮頸管を突破できるということです。
したがって、子宮頸管に問題がある場合には人工授精が適応となります。
人工授精の適応
- セックスレス
- 子宮頸管に問題がある
逆の言い方をすれば、上記以外の原因がある(卵管や排卵、精子に問題がある)場合は、人工授精をしたとしても妊娠する確率は極めて低いでしょう。
尚、人工授精は5~6回で累積妊娠率が頭打ちとなるため、それ以上回数を重ねても妊娠は期待できません。
次のステップとして体外受精を検討する必要があります。
人工授精の適応となる子宮頸管の問題
子宮頸管の問題というのは、
- 頸管粘液(排卵期のおりもの)量の低下
- 頸管狭窄
- 頸管ポリープ
- 頸管炎
上記の原因によって、精子が子宮頸管を通ることができない状態をいいます。
子宮頸管に問題があるかどうかは、婦人科で行うフーナーテストで簡単にわかるので、人工授精を行う前に一度検査することをおすすめします。
不妊治療で行う精子調整
生殖保持医療では、採取された精子をそのまま用いるのではなく、受精能力の高い精子を選別、凝縮して子宮内に注入します。
この過程で、奇形精子や死滅精子は取り除かれ、良質な精子だけが残されます。
人工授精では、調整後の運動精子数は80~500万が限界とされ、それ以下の場合は人工授精の適応にはなりません。
また、基本的に男性はマスターベーションによって精子を採取します。
もしも採精場所を自分で選べるなら、より新鮮な精子を提出するために病院で行うようにしましょう。
通常の性交であれば、射精された精子は空気に触れることなく子宮の中に到達しますよね。
自宅で採精してから病院に持っていくには時間がかかりますし、その間に空気に触れることで精子が変性してしまう可能性があります。
妊娠率を上げるためにも、極力病院で採精するようにしてください。
【不妊治療】体外受精
体外受精の概要
採取した卵子に調整精液を滴下し、体外で受精させることを体外受精といいます。
受精卵は、ある程度まで培養された後、子宮に戻されます(胚移植)。


人工授精と異なり体外で受精させるため、卵管に原因があって自然妊娠に至らないケースでも、体外受精で妊娠する可能性はあります。
体外受精の適応
- 両側の卵管機能障害
- 重度の精子の障害(数が少ない、運動率が低い)
上の2つは絶対的適応であり、人工授精をとばして体外受精が適応となります。
その他の原因によるものであっても、タイミング法、卵巣刺激、人工授精の段階を経て妊娠に至らなかった場合は、体外受精を検討するケースがあります。
体外受精でカギとなる卵管の問題
卵管の機能障害による不妊症は、女性側の原因の中で最も多く、30~40%を占めています。
- 卵管の閉塞・狭窄
- 卵管の癒着
- 卵管の水分貯留
これらの病態によって左右の卵管に異常がある場合は、精子や受精卵が通ることができないため、体外受精の適応となります。
ただし、病院で卵管に異常が見つかったからといって、すぐに体外受精に踏み切る必要はありません。
卵管の機能障害があっても、治療可能な例もあるからです。
例えば、卵管の閉塞や癒着は造影剤検査によって発見されますが、造影剤は閉塞部分を押し広げながら通過するため、検査後には卵管の通過性が改善していることがあります。
つまり、造影剤検査には治療効果もあるということです。

実際に、造影剤検査の後には妊娠率が上昇することが確認されています。
卵管自体が炎症を起こして癒着している場合は難しいかもしれませんが、軽度の狭窄や癒着であれば整体で改善することも可能です。
個人的な経験談になりますが、両側の卵管閉塞がある方でも、子宮や卵巣、骨盤帯の調整をした結果、自然妊娠された方はいます。
卵管に問題が見つかったとしても焦らず、まずは治療可能かどうか担当医に相談してみましょう。
【不妊治療】顕微授精
顕微授精の概要
体外受精で妊娠に至らなければ、顕微授精にステップアップします。
顕微授精は、顕微鏡下で採取した卵子に針を刺し、1匹の精子を注入して受精させてから子宮に戻す方法です。
体外受精と同様に、受精卵を培養してから子宮に移植します。

顕微授精の適応
顕微授精では、1つの卵子に1つの精子を直接注入するため、理論上受精率は高くなります。
日本生殖医学会によれば、顕微授精で受精する確率は50~70%ですが、これは精子が自力で卵子に結合するのを待つ人工授精や体外受精と比べて高い数字です。
ただし、受精が成功したからといって、その後も無事に育つとは限りません。
子宮に着床するか、その後も流産することなく正常に育っていくかはまた別の話です。


精子が自力で卵子に結合することを「受精」、精子を人間の手で卵子に結合させることを「授精」といいます。

あれ、じゃあ人工授精も「受精」が正しいような…

人工授精については、当時、人の操作によって妊娠することが初めてだったため、「授精」といわれているんです。
顕微授精の安全性については研究中
1983年、日本で初めて顕微授精による子どもが誕生しました。
世界的にみてもまだ歴史の浅い分野ですが、晩婚化や高齢出産の増加に伴い急速に普及し、今や生殖補助医療の8割を占めています。
自然妊娠が難しいカップルでも、自分たちの遺伝子を繋いで新しい生命を授かることができる。
この革新的な医療技術によって救われる夫婦は、今後も増え続けることでしょう。
しかし歴史が浅いということは、「未だ研究中」の分野でもあります。
顕微授精の安全性については、現段階で十分に確立されているわけではありません。
先天性奇形や自閉症のリスク、出生後の長期的な影響などに関して、現在も追跡中なのです。
どのような治療にしても、メリット、デメリットを天秤にかけて自分で納得できる選択をしたいですね。
【不妊治療】人工授精、体外受精、顕微授精 まとめ
人工授精、体外受精、顕微授精の違いについて、理解できたでしょうか。
ここでは大まかな概要について説明しましたが、費用や妊娠率は病院によって大きく異なります。
当然ながら、年齢によっても適応や成功率は変わってきます。
色々な要素を考慮した上で、自分たちに合った治療を選択しましょう。
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