本記事ではこんな疑問にお答えします。
私は整体師として活動していますが、基本的には全身の「筋膜」に対して徒手的にアプローチしています。

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筋膜の滑走性や柔軟性が失われてしまうと、身体は本来の機能を発揮できなくなり、結果として痛みが生じたり動きが悪くなったりするんですね。
数年前からメディアでも「筋膜リリース」という治療法が取り上げられるようになり、世間にも徐々に筋膜という言葉が浸透し始めていますが、そもそも筋膜とはどのような組織なのでしょうか。
また、「筋膜の癒着を剥がす」という謳い文句で筋膜リリースが紹介されていたりしますが、筋膜の癒着とはどのような状態で、治療の効果はどれほどなのでしょうか。
本記事では、
- 筋膜とは
- 筋膜の癒着について
- 筋膜の癒着に対する治療の効果
について、わかりやすく解説します。
筋膜の癒着とは
筋膜は全身を連結する組織
一般的に、筋膜とはその名の通り「筋肉を包む膜」と考えられています。
しかし実は、この認識は大きな誤りです。
全身には筋肉の他にも、骨や内臓、神経、血管など、様々な組織が存在しますが、それらを包む膜を総称して筋膜といいます。

つまり、筋膜といっても単に筋肉だけを覆う膜ではないということですね。
鶏肉や牛肉の皮膚や脂の部分をめくると、肉との間に薄い膜が見えると思いますが、これが筋膜です。

各筋膜はそれぞれ独立して存在するのではありません。
互いに連結し合い、頭のてっぺんからつま先までひとつながりになっています。
わかりやすくいえば、全身をボディスーツのように覆っているようなイメージですね。
筋膜の役割
筋膜には浅筋膜と深筋膜があり、筋肉や内臓、血管、神経を覆っています。

筋膜には以下のような役割があります。
- 組織の保護
- 組織との間で滑走性を維持する
- 各組織を連結する
- 力を伝達する
- 病巣が他の部位へ伝搬するのを防ぐ
大切なのは、筋膜の正常な滑りによって身体は動くことができるという点です。
いくら筋肉が頑張って収縮しても、それだけでは身体はスムーズに動くことはできません。
上の図でいえば、筋膜と筋肉との間が滑らかに滑ることで、はじめて筋肉は力を発揮することができるのです。

私たちが身体を自由に動かすことができるのは、筋膜の滑走性や柔軟性が確保されているからなんですね。
筋膜が癒着するってどういうこと?
では、筋膜の癒着とはどういう病態なのでしょうか。
Wikipediaでは、癒着について以下のように説明されています。
癒着とは炎症により、本来離れているべき組織同士が臓器・組織面がくっついてしまうこと。
要は、何らかの理由によって
- 筋膜と組織との間
- 筋膜と筋膜の間
でスムーズな滑りができなくなっている状態です。

筋膜の癒着が生じると、以下のような弊害が起こる可能性があります。
- 運動制限(膝が曲がらない、肘が伸びない等)
- 筋出力の低下(力が入りにくい)
- 血流の低下
- 痛み
- 不良姿勢
また、各筋膜は互いに連結しているため、癒着が生じている部分から遠く離れた部位にまで波及することが考えられます。
例えば、盲腸の手術をした後に腰痛が生じるケースがありますが、これは決して偶然ではありません。
盲腸を包む筋膜が癒着を起こしたことによって、腰の筋膜が引っ張られて痛みが生じてしまうのです。
全く関係がないように思えますが、このような例は臨床的に非常に多くみられます。
筋膜の癒着を剥がすことはできるのか
強い癒着は治療困難
次に、なぜ筋膜の癒着が起こるのかを考えてみましょう。
結論からいうと、筋膜の癒着の最も大きな原因は手術による影響です。
どんな手術でも身体にメスを入れると、術創部周囲の欠損組織は結合組織や膠原線維という組織に置き換わることで修復されます(瘢痕化)。
この過程で組織同士がくっついて治癒することがあり、開腹手術をした場合、90%以上の確率で癒着が生じるとされています。

このように手術によって生じる癒着は非常に強固であるため、どんな治療法を使っても改善することはありません。

手術による癒着は、ハサミを使ってもなかなか切れないと言われています。
手術や注射は一時しのぎに過ぎない
癒着を剥がすための治療法として、手術や筋膜リリース注射があります。
しかし、これらは一時的に癒着を取り除くだけであって根本的な解決にはなりません。
そもそも手術によって癒着が生じるのですから、癒着を剥がす手術をしたとしてもまた新たな癒着を作り出す要因となるだけですよね。
筋膜リリース注射においても、一時的な効果は期待できるかもしれませんが、時間が経てば再発する可能性が高いでしょう。
なぜなら、癒着が生じる原因に対してアプローチできていないからです。
筋膜の癒着は、手術の他に炎症によっても生じますが、
- 炎症周囲の老廃物が排出されない
- 組織を修復するための栄養素が不十分
という身体の状態が癒着をつくる素因となります。
つまり、癒着を剥がすためには血流状態を改善し、不要な物質は排出し、必要な物質を送り込む必要があるのです。
血流の問題を解決せずにただ注射を施したとしても、一時しのぎの対策に過ぎないでしょう。
炎症による癒着であれば改善の余地あり
炎症による癒着は、手術による癒着と違い組織の変性はそれほど強くありません(個人差はありますが)。
例えば、胃腸炎によって胃とその周囲の筋膜が癒着したり、他の臓器の筋膜と癒着することがありますが、炎症に起因する癒着は早期の段階であれば改善する可能性があります。
巷で流れている筋膜リリースを自分で実践しても良いですし、根本的な解決を図りたいのであれば整体院で診てもらうことをおすすめします。
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専用の道具を使って筋膜リリースをしたり整体院で徒手的にアプローチすることで、全身の血流を促し、筋膜の癒着による身体の問題に対処することができます。
ただし、当然ながら時間経過とともに組織の変性が進むため、経過が長いほど改善しにくくなります。
できるだけ早めに対処することが理想ですね。
筋膜の癒着について【まとめ】
- 筋膜は全身を連結する組織である
- 筋膜の癒着は、身体の動きを制限し、痛みや不良姿勢の原因となる
- 筋膜の癒着は、主に手術や炎症によって起こる
- 手術による癒着を剥がすのは難しいが、炎症によるものであれば徒手的に解決を図ることができる
筋膜や癒着について理解できたでしょうか?
筋膜は人体を構成する非常に大切な組織です。
そのため癒着が起きてから対処するのではなく、日頃から健康な筋膜を保つことが重要となります。
今回は以上です。
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