無痛分娩に対する批判が的を得ていない件について【議論すべきは医学的リスク】

無痛分娩に対する批判が的を得ていない件出産
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最近、日本でも増えている無痛分娩による出産。

あなたは賛成派ですか?それとも反対派ですか?

無痛分娩に対する批判としては、

  • 我が子はお腹を痛めて産むものだ
  • 苦しい経験をするからこそ子どもへの愛情が沸く
  • お産は辛くて当たり前

といった精神論に帰結する声が多く、中には夫や義母に反対されて悩んでいる女性も少なくありません。

私は日頃、整体師として妊婦さんと接する機会も多いのですが、この批判については全く的を得ていないと思っています。

たしかに、過去には無痛分娩による重大な事故も起きているため、世間で批判的な意見が起こるのは当然です。

ただ、議論するのであれば、非科学的な精神論で相撲をとるのではなく、具体的な医学的リスクと安全性について論じるべきではないでしょうか。

本記事では、

  • 無痛分娩に対する批判が的を得ていない理由
  • 無痛分娩の医学的リスク

について解説していきます。

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  • 無痛分娩を検討している
  • 無痛分娩を批判された
  • 出産方法について悩んでいる

という方は、是非読んでみてくださいね。

・関連記事:『知っておきたい帝王切開のリスク。母親や子どもへの身体への影響とは?

無痛分娩に対する批判が的を得ていない件

批判の多くが非科学的な精神論

「マイナビニュース」が行ったアンケート調査では、無痛分娩に反対する理由として以下のような意見が挙げられました。

・「痛みを伴ってこそ子供に対する愛情も深まると思う」(31歳男性/機械・精密機器/技術職)
・「自然でないから」(50歳以上男性/不動産/経営・コンサルタント系)
・「痛みを感じないのは自然に反する」(32歳男性/金融・証券/専門職)
・「子供に対する愛情が薄れると思うから」(25歳男性/農林・水産/技術職)
・「痛みを知ってこそ母親になれると思います」(32歳男性/機械・精密機器/技術職)
・「母親としての自覚を持つには痛みにも意味があると思う」(26歳女性/生保・損保/営業職)

引用:「マイナビニュース」より

批判的な意見のほとんどが、「痛みを経験することが大切」といった精神論的な理由に起因していますね。

それに対して賛成派の人は、「出産は皆命がけ。どんな方法で産むかよりもどんな気持ちで産むのかが大切」といった精神論で反論します。

この論点でバトルしてしまうと、結局は双方の感情がベースになるので、どこまでいっても平行線です。

少なくとも建設的な議論とはいえません。

一ついえるのは、

  • 出産で苦痛を伴うことが我が子への愛情形成につながる
  • 痛みを経験しなければ母親としての自覚が芽生えない

という意見は「出産=痛い」「我慢=良いこと」というイメージから産まれた非科学的な内容であること。

実際にそのようなデータを証明する研究報告は一切ありません。

では、無痛分娩率が高い諸外国では、人々はどのような認識を持っているのでしょうか。

無痛分娩が普及している欧米諸国

日本の無痛分娩の割合は徐々に増加しているものの、全体としては1割以下に留まっており、まだまだ普及しているとはいえません。

日本の無痛分娩率
データソース:日本産婦人科医会「分娩に関する調査」

一方、欧米諸国では無痛分娩による出産は半数以上を占め、「当たり前」になりつつあります。

海外の無痛分娩率
  • アメリカ…73.1%
  • カナダ…57.8%
  • イギリス…60%
  • フランス…82.2%
  • フィンランド…89%
  • スウェーデン…66.1%
  • ベルギー…68%

※データソース:日本産科麻酔学会

欧米で無痛分娩が盛んである理由としては、

  • 医療設備やスタッフなどの環境が整備されていること
  • それによって安全性が確立されていること

加えて、日本のような「出産は痛みを経験するべきだ」という世間の批判がないことも関係しています。

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上記のような非科学的な反論は、「我慢することが美徳」という日本人独特の価値観が影響しているのかもしれませんね。

無痛分娩で出産した人の声

では、日本で実際に無痛分娩で出産した人の意見を見てみましょう。

実際に無痛分娩を経験した人のツイートを見てみると、「出産が楽」「産後の回復が早い」という点で満足している人は沢山います。

時々、「麻酔が効かず思ったよりも痛かった」という方もいますが…。

いずれにしても、「無痛分娩にしたから子どもを可愛がれない」といった、精神論的批判を裏付けるような意見は、探す限り見当たりません。

むしろ、母親はお腹の赤ちゃんを大事に思うからこそ無痛分娩を選択するのではないでしょうか。

我が子と初めて対面する出産の場を

  • 幸せな思い出にしたい
  • できるだけ負担を少なくしたい

と願うのは当たり前の感情であり、皆一緒ですよね。

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無痛分娩の医学的リスクの実際

無痛分娩の医学的リスクの実際

ただし、無痛分娩による合併症や副作用は確実に存在します。

無痛分娩の賛否について議論するのであれば、精神論ではなく、安全性とリスクにフォーカスすべきなのです。

無痛分娩は自然分娩よりもリスクが高い

日本の無痛分娩率が低い理由の一つに、「欧米ほど安全性が確立されていない」という事実があります。

2016年から2017年にかけて、無痛分娩による死亡事故が相次いで報道されました。

  • 京都では同じ医療機関で3件の事故が起き、1件は子どもが寝たきりのまま3歳で死亡、2件は母子ともに植物状態
  • 神戸では母親が寝たきりのまま死亡した事例が2件、そのうち1件は子どもも寝たきりの状態
  • 大阪では母親は寝たきりのまま10日後に死亡

この重大な事故を受けて、2017年に日本産婦人科学会は、以下の内容の緊急提言を発表します。

無痛分娩に関する緊急提言
  • 無痛分娩は、自然分娩と違った分娩経過をとることを認識する(陣痛促進剤、吸引鉗子分娩が必要となる率が高いなど)
  • 無痛分娩は、自然分娩のみを扱うときよりも、より高いスキルとマンパワーが必要なことを認識する
  • 局所麻酔薬中毒や完全脊髄くも膜下麻酔などの合併症に対する知識とトラブルシューティングに熟達する

要は、「無痛分娩は自然分娩よりもリスクが高く、より高度なスキルを要する」ということです。

海外の無痛分娩との決定的な違い

一方、欧米では、一般人が無痛分娩のリスクを意識することはほとんどないようです。

裏を返せば、それほど重大な事故が起きていないということですよね。

では、なぜ国によって無痛分娩に対する認識が異なるのでしょうか。

実は、一言で無痛分娩と言っても、日本と海外では以下の点において大きく異なります。

海外の無痛分娩
  • 産科医だけでなく、麻酔科医、新生児科医らがチームとなって、緊急時にも対応可能な医療介入がされている
  • 24時間365日体制で行われているため、陣痛促進剤を使った計画分娩をする必要がない(陣痛が起きてから麻酔を打つ)
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海外では、十分なマンパワーがあり、必要最低限の医療介入に留めているということです。

対する日本の無痛分娩は、陣痛促進剤と硬膜外麻酔による完全計画分娩が主流です。

この方法のデメリットは、

促進剤で強制的に陣痛を起こす⇒痛み増加⇒麻酔注射⇒陣痛が弱まる⇒促進剤追加

という負のサイクルに陥りやすいことです。

結果として、分娩コントロールが難しくなり、吸引分娩などの処置が必要になる可能性が高くなります。

そもそもなぜ日本では計画分娩にするかというと、病院スタッフが確保できる平日の昼間にお産を誘導するためです。

日本の産婦人科医不足は深刻であり、無痛分娩を取り扱っている医療機関でも、産婦人科医一人で対応しているケースは珍しくありません。

日本と海外とでは無痛分娩の在り方はまったく異なるということを、理解しておきましょう。

デメリットを理解した上で判断を

デメリットを理解した上で判断を

医療行為には必ずメリットとデメリットがあります。

無痛分娩も例外ではありません。

上記のリスクをきちんと理解した上で、どのような選択をするかはあなた次第です。

重要なのは、非科学的な批判や情報に惑わされるのではなく、事実としてどのようなデメリットがあるのか、それに対してどう考えるかです。

そのためには、精神論で賛否を問うのはなく、安全性とリスクに論点を置いて検討すべきでしょう。

人生の中でも貴重なイベントを幸せなものにするために、悔いのない選択をしてくださいね。

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